サオとイトは操作性と感度重視 |
チャラはナイロンイトに限るというのが定説だが、ぼくは逆である。
浅いチャラでのイトフケによるオトリのコントロールはツケイトの ナイロンイトで充分だし、何よりも感度がいいからである。
金属ラインはハリが底石をひっかくガリガリという音まで伝えてくれ るし、根掛かりを初期段階で手元に伝えてくれる。ハリが石に食い込ん
でしまっては外れにくいが、初期段階ではちょっとサオをあおれば外れ やすい。つまり、金属ラインは根掛かり防止にも有効なのである。
また、風にも強いことが挙げられる。チャラでは、とくにオトリ 操作の微妙さが要求され、ナイロンに比べ風の影響の少ない金属ライン
のほうが有利だと思う。 サオは、一日中持っても重さを感じず、風の抵抗の少ない細身・軽量
が基本。瀬釣りのようにサオをのされるという心配もないので剛竿であ る必要はない。ただし、場を荒らさないためにできるだけ素早く抜く
必要がある。また、座って釣って、座って抜くケースもしばしばなの で、パワーは絶対に必要。
そして、チャラの釣りの場合は、オトリアユを自在に動かせる操作性 を重視し、ぼくは9mの長さが基本。10mでは、操作性、感度とも9mに
は及ばないからである。ただし、広いチャラで風もないときは10mも使う。
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根掛かりを防ぐ工夫と技術 |
チャラ釣りでもっとも気をつけなければならないのは、根掛かりである。
今回のマスターズ、西日本ブロック大会の馬瀬川決勝戦のことだが、ぼくの すぐ下に入った選手がやはり根掛かりしてこれを回収に行き、そのままその
場所をあきらめた。野アユが再び帰ってくるには、5〜10分の時間が必要で あり、根掛かりしたらあきらめるのが普通であろうと思う。
チャラでは一度根掛かりすると、周囲の魚が散ってしまうので、極力根掛 かりを避ける工夫が必要である。その極意を述べてみよう。
●ハリは軽薄短小 根掛かりそのものはハリがするのであるから、まず第一にハリの選定から
考えてみよう。ハリは軽ければ軽いだけ“垂れ”が少なく、小さければ 小さいだけ掛かりが悪くなるので根掛かり率は低くなる。
しかも、ハリが軽くて小さければ、それだけオトリへの負担が軽くなり 泳ぎがスムーズになる。スイスイ泳げば、根掛かりも少なくなる道理である。
根掛かりは、オトリが止まってハリが垂れ下がったときいちばん起きやすい からである。つまり、ハリは軽薄短小がいちばんである。
が、それではアユの掛かりが悪くなるという意見もある。しかし、ハリを 大きくして根掛かりするよりも、少々掛かりが悪くても、根掛かりを防ぐ
工夫のほうがチャラでは大事であると思う。 そこでぼくの基本形は、早掛けタイプのハリ7〜7.5号の3本イカリである。
4本イカリは、それだけハリが重くなるので普通は使わない。しかし、 野アユの元気のいいときや入れ掛かりのときなどは、根掛かりの心配が余り
ないので掛けかかりを重視して4本イカリに変える。 逆に、養殖オトリで1尾めをとるまでは、、6.5号といった小さくて軽い
ハリの3本イカリにし、泳ぎを重視し、根掛かりを極力避ける。ときには チラシを使うこともある。
●ハリスは細くて硬めを
ハリスはハリとのバランスで考えるべきだがチャラの場合は、細くて 硬めのハリスがベスト。
瀬の場合は太めで軟らかいハリス、トロがその中間ということになる だろう。ぼくの場合、チャラでは0.6〜0.8号で硬い性質のものを選んで
いる。ハリスは、野アユへの絡みも考えれば軟らかいほうがよいのだが、 やはり根掛かりのほうが恐い。
●ハナカン周りも軽薄短小
ハナカンも、ハナカンから逆バリにいたるイトも、そして逆バリも、 できるだけ軽薄短小をめざす。アユの泳ぎを重視するからである。
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アユがいるのに釣れないときは? |
チャラでアユが石を食んでいるのが見えるのに釣れない場合も
よくあること。こんなに苛立つことはない。これが大会ならなお さらである。あの1尾さえ釣れたらと、余計熱くなって冷静さを
失い、気がついたらオトリを引き回していた、なんてね。 こんなケースでは、誘いが有効である。石裏の波立ちなど、
チャラの中の変化を読んで、ここぞというポイントで止めて待っ ても掛からないときは、オトリの鼻先をわずかに持ち上げ、そし
てイトを緩めるのである。鼻先を持ち上げられたオトリが思わず 潜ろうとして尻尾を振り、急激にイトを緩められると、つっかい
棒がなくなってクルリと回転。 つまり、スパイラルである。 オトリの異様な動きに刺激されて、野アユが突っ掛けてくると
いうわけだ。チャラではとくに、このスパイラルが有効である。 |
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オトリは韋駄天である必要はない |
スピード豊かに、元気よく泳ぐオトリが絶好の狙ったポイントに近づく。
さあ、あとは野アユの突撃を待つばかり・・・。しかし、何の音沙汰もなく オトリは遥か彼方までス〜イスイ。こんな口惜しい経験は誰にも覚えがある
だろう。 浅いチャラはとくに泳ぎやすいのでスピードが出る。スピードの速すぎる
オトリには、野アユも追うタイミングを失うのか、掛からないケースが多い。 こんなときは、1回めはとにかくオトリを最上流まで泳がせて疲れさせて
やるのである。つまり、仕切り直しである。2回めになると、1回目ほどの スピードは出ず、野アユも追いやすくなろうというもの。
オトリの泳ぐスピードの理想は、ちょうど犬を散歩させているような感じ で、歩いてはちょっと立ち止まり、また歩いては今度は駆け足になる、こ
んな感じがよい。 |
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ポイントを休ませながら釣る。 |
ハエ釣りは、寄せエサを中心にした1点にエサを振り込んで釣るが、
アユは逆に今釣れたポイントは次には休ませ、違う方向にオトリを泳 がせる。 先に、オトリは上へ飛ばせといったが、それは真っすぐに上という
ことではなく、斜め上流、下流に向けて泳がせてそこから上がらせる など、1回1回ポイントを変え、釣れたポイントを休ませながら釣る
ことが大切である。 尻別川の決勝のときでも、僕は1ヶ所でほぼ動かなかったが、釣っ たのは180度にわたる広い範囲であった。
とくに上へ泳がせたら次は沖へ出し、また下流へいったん出してから 上がらせるなどしたのが効果的だったと思う。 |
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上流へ飛ばすのが極意。 |
チャラ釣りの極意は、とにかくオトリを上へ泳がせることにつきる。それ以外は何もないと
いっても過言ではないほどである。 ハナカンを通したら、オトリを上流に向けて静かに放してやるのである。すると、しばらく
じっとしているが、やがてススー、ススーッと上流沖に泳いでゆくだろう。 その時、サオの操作でイトフケを調整しながら、方向性とスピードを決めてやる。
重要なことは、オトリを泳がせたい方向に向けて放してやるということだ。
また、自分の意図した方向に泳がないからといって、強引な操作をするのは厳禁。オトリを
無理矢理方向転換させようと鼻先を引っ張ると、オトリは途端に泳ぐ意欲をなくしてしまう。
自分が自由ではないことを知って、本能的に怯えるのであろう。 |
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サオは高くしても、腰は低くせよ |
水深20〜30cmの浅いチャラチャラでは、立てザオでの泳がせが基本である。引き釣りでは、まず釣れない。
そしてもう1つ大事なことがある。野アユに人の気配を悟られてはいけないということである。
忍者のごとく抜き足・差し足でポイントに近づき、ここぞと思う所で膝をつくとか座り込むなどして、とにかく腰を低くすること。
川魚の天敵は、文字通り天から襲ってくる鳥類であるから、眼は常に上を警戒している。
人の影などを確認すると、警戒して姿を隠してしまう。ナワバリアユは5〜10分で元のところに戻るというが、そこに人の気配を感じたら戻れないので、とにかく腰を低くして、静かに釣ることである。
今回のアユマスターズの全国大会がテレビで放送され、僕の釣っているシーンを見た仲間が、「珍しゅう腰まで立ち込んで釣っとったね」と勘違いしていたけど、それはぼくが川に正座して釣っていたから水が腰まであるように見えたというわけだ。 |
ヘチこそ勝利への近道 |
最近は、アユの放流量が多くなり、各河川とも過密状態。放流量が多いと、アユは1級ポイントだけではなく、2級、3級のポイントにもナワバリを持つ。また、放流量の多い川は、噂を聞きつけて釣り人も大挙して押し掛けてくるので、誰が見ても1級ポイントという場所はアユがナワバリを持った先から釣られてしまう。そういう川では、2級、3級のポイントで大釣りすることがよくある。
とくに、釣り人が見逃しがちなのが、へチのチャラチャラである。大会の場合でも、参加者は1級ポイントに固まることがほとんどで、こういうちょっとした場所にアユが残っていることが多い。ヘチのアシ際などは大勢の釣り人に追われたアユたちの隠れ場所であり、その防空壕のような所にオトリアユを送り込んでやると、一発心中である。
とにかく、1級ポイントで釣れないときは、へチねらいを頭におこう。今回の大会でも、太田川の地区予選しかり、西日本ブロック大会の馬瀬川しかり、そして全国大会決勝戦の尻別川しかりである。誰もが「アッ、あんな所で」と、最初は半信半疑、しかし最後は納得の場所であった。ただし、アユの薄い川では、野アユはこんな場所にナワバリを持たなくても生きていけるので、1級ポイントにねらいを定めたほうが無難だ。
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チャラにも瀬があり、トロがある |
「アユは石を釣れ」が鉄則だ。瀬では大石周りから攻めれば問題は無いが、
小石がビッシリと一様に並ぶチャラ瀬では、ポイントが分かりづらい という人もいる。 で、盲滅法に泳がせては釣れない・・・。
チャラは一見平坦に見えても、よく目を凝らしてみれば瀬もあり、瀬肩もあり、瀬尻もある。 もちろんトロもちゃんとある。
この変化を見逃さずに釣る事が大切だ。 チャラの中の瀬とは、 平坦な流れの中にできている周りよりも深い「溝」である。
周りよりも流れがあり、水通しが良いのでいいアカが付きやすい。 この溝を更に見ると、流れの速くなっている所、逆に遅い所、溝の中でも深い所、
浅い所、石がまばらな所、比較的大きな石が並んでいる所・・・ とまさに変化の連続であることに気付かれるはずである。
オトリを、こうしたチャラの中の瀬や瀬肩にねらい撃ちすれば、 掛かる確率は一層高くなる。逆にいえば、何の変化もないチャラではアユは釣れない
とも言えるわけである。 |
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チャラ釣りの醍醐味 |
浅いチャラ釣りは、繊細な仕掛けに静かな釣り、そして根掛かりとの格闘・・・など、なかなかやっかい。「アユは豪快な瀬釣りに限る」という人にとっては、近寄りたくない釣り方と言えよう。実はこの僕も、友釣りは荒瀬釣りから入ったため、初めはトロ場とかチャラ瀬釣りには見向きもしなかった。第一、そんな場所にいる野アユは、ナワバリ争いに敗れた体力の無い 負け犬
だけであると思っていたのである。ところが、鮎マスターズの地区大会で初めて太田川に行ったとき、トロやチャラの釣りの威力を見せ付けられ、「いっちょうやってみるか」という気になったのである。ちょうどその翌年の夏、荒瀬釣りをしていて、引き船の力で腰をいためてしまった。
これでは瀬に立ち込むことができないわけで、腰に負担のかからないトロやチャラを釣るしか手がなくなったのである。
そうして恐る恐るはじめたチャラ釣りであるが、やってみて分かった事は、それまで思っていたことが全て偏見であったということである。
チャラのアユは小さいと思っていたが、釣り荒れていなければ大きいし、第一数が豊富である
また、荒瀬のアユ釣りは単純だが、チャラの場合は多彩なテクニックが必要である。良く釣れた時はうれしいが、釣れなかった時には「なぜなのか」を考え、次にまた釣れた時の充実感がある。
瀬で釣れなかった時には、アユがいなかったからの一言でかたずけていたものである。
チャラで釣っても、アユ釣り本来の豪快な引きが味わえないと言うのも誤解であった。
浅いところでは、浅いなりの引き味というものがある。とくに、狙い撃ちした石周りで野アユの
閃光のような追いが見え、掛かった時に魚体がもつれるように夏の日に輝く様は強烈。サオに伝わる衝撃とともに、眼でも掛かる瞬間を体験できるわけで、これは白波立つ瀬では味わえないものである。 |
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安田 明徳 スーパーチャラ瀬釣りの極意 第1回 別冊つり人(株式会社つり人社より) |
岡山駅西口から車でほんの数分、一歩入れば住宅地という通りに面して「安田釣具店」はある。
釣具店の主人と言えば、どこか世間をあきらめたような枯れた感じを連想させるが、
この店の主人は明るく元気で生き生きしている。若いころ、釣り好きか昂じてサラリーマン生活に別れを告げ、独力でこの店を開いた。
その主人・安田明徳さんは、ハエ釣りでは全国で5本の指に数えられる名手である。 ところが、鮎釣りでも全国区の仲間入りを果たしている。
93ダイワ鮎マスターズで、居並ぶ強豪達を破り、第7代目のチャンピオンになったのである。
ハエを制するもの鮎をも制すーという諺は生きていたのである。
この鮎マスターズの出場選手たちのなかでも、村田満さんをはじめ、片山悦ニさん、山元八郎さん、尾崎孝雄さん、主藤秀雄さんら、いずれもハエ釣りの名手であった。
安田さんは当初、アユはコロガシ専門であったが、学生時代の同級生に友釣りを勧める人がいて
渋々始めたところ、たちまちそのおもしろさにに惹かれてしまった。
そして、たいていの人がそうであるように、最初は荒瀬の豪快な釣りに満足し、やがてトロへ そしてチャラの釣りへと目覚めて行った。
「マスターズの第3回大会の中国予選が太田川で開かれることになって、仲間と初めて遠征をしたわけ。下見をせにゃいかんということで前日から川に入ったんじゃけど、地元の人が今まで見たことも無いような所で入れ掛かりになっとるんよ。私が釣っとった旭川(岡山県)では、当時はみんな瀬しかやらんかったわけよ。で、太田川へ行ってみると、トロで立てザオじゃろう。アユは瀬にしかおらん思うとったもんじゃからびっくりして・・・一種のカルチャーショックですわ。それからトロやチャラをやるようになってね、友釣りのおもしろさが3倍にも4倍にもなりましたよ。 |
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